初版発行が2008年6月。このレビューを書いている段階で、最も新しいスペイン事情解説本といえます。この夏のスペイン旅行を目前に控えて手にとってみました。政治・経済・文化、幅広い分野にわたってスペインの過去・現在そして未来を10人の執筆者が分担して詳しく綴っています。
これはスペインに対して日本人が抱きがちな偏見'といって悪ければ誤解ないし思い込み'を随分と正してくれる本だと思いました。例えば:
(思い込み その1)スペインにはシエスタという独特の伝統文化がある。
ある雑誌の調査では週3回以上昼寝する人の割合はスペインよりもドイツやイギリスのほうが高い。(134頁)
(思い込み その2)スペインの経済力は大したことない。
1997年から2006年にかけてスペイン経済は平均3.8%の成長を続けた。しかもEU平均を常に1ポイント程度上回っていた。(227頁)
スペインのソブリン債の格付けはドイツ国債と同じ最高位のAAA。日本の国債よりも評価は高い。(242頁)
世界第3位の百貨店はスペインのエル・コルテ・イングレス。(237頁)
スペインで深刻な問題となっているDVについて触れた箇所で、イシアル・ボジャイン監督の映画「Te Voy Mis Ojos」が取り上げられています。被害者の妻だけでなく、加害者である夫の内面も掘り下げた秀作として紹介されているこのスペイン映画は、残念ながら日本では一般公開されずDVDも販売されていません。私は、スペインでDVDを買って帰ってみましたが、大変素晴らしい作品だと思いました。DV問題は日本ではようやく表面化してきたといえる段階ですが、このスペイン映画を広く日本でも見られるように、映画関係者のどなたかが力を尽くしていただけないものでしょうか。
*81頁下段にある「青田刈り」は「青田買い」とすべきところです。