【「本書の使い方」より】
本書の姉妹編である『スペイン語作文の方法(構文編)』では動詞を中心にして、スペイン語の基本的な165の構文を学習しました。『構文編』では、日本語をスペイン語に翻訳する際に、文法や構文の誤りのない文を作ることを目標に掲げました。『構文編』で述べたように、スペイン語の文法規則に従った構文を使わなければ、スペイン語として意味の通じる文を作ることはできません。その意味で正しい構文を習得することは不可欠です。しかし、いくら文法的に正しい構文を駆使してスペイン語を書いても、正確に自分の意図が伝達できないことがあります。文法的に正しい文を作ったのに、言いたいことがうまく言えないという経験を外国語の学習者の大半が持っているはずです。これは語彙の選択のミスに起因することが多いのです。文脈に応じた適切な語彙を使わなければ、日本語の意味するところは伝わりませんし、また誤解を招いたりします。外国語で作文するむずかしさは、状況に応じて適切な語彙を選択することの困難さにあります。母語の影響で誤った語を使ってしまうこともありますし、スペイン語の語のもつ意味を正しく理解していないために生じるミスもあ\xA1
ります。ところが、適切な語彙を選定するためには、豊富な語彙力や語感が要求されるのです。しかもこれは短期間で習得できるものではありません。文法規則の数と比べたら、辞書に載っている単語は厖大な数になります。そして一つの意味だけをもつ語は意外と少なく、二つ以上の意味をもつ語(多義語)のほうが多いのです。
この『表現編』では、まず適切な語彙を選択する力をつけて(第1章〜第3章)、様々な概念をスペイン語で表す能力をつける(第4章〜第7章)ことに主眼をおいた練習をします。そして最終章(第8章)ではスペイン語の表現力を向上させるために必要ないくつかの注意点を学びます。
さて、本書の使い方ですが、『構文編』の場合と同じく、ヒントを参考にして、なるべく辞書の助けをかりずに課題文をスペイン語に訳してみてください。そして自分の訳を解答例と比べて、ミスをチェックし、できれば課題文の解答例を付録のCDを聞いて暗記してください。次に練習問題(合計417題あります)を同じ要領で訳してみてください。ただ、本書の利用法はこれだけはありません。課題文が難しいと感じる人、あるいは解説を読むのが面倒な人は、解答例のCDを繰り返し聞いてから、課題文に挑戦されてもかまいません。また、第1章から始めるのではなく、どの章から始めてもかまいません。ただ、第1章で扱っている知識はスペイン語を書く際にとても重要ですので、一度はじっくり読んでください。
本書の139の課題文はCDに収めてありますので、繰り返し聞いて、実際に声に出して音読してみてください。作文の教材にCDによる音の情報をつけるのは、耳から情報を得ることが外国語の習得には不可欠であるという理由によります。聞き流すだけでもかまいませんから、何度もCDを聞いて139の課題文をスペイン語で言えるようにしてください。音読することによって、また繰り返し聞くことによって無意識のうちにスペイン語の表現が身についていくはずです。
単純に考えると、日本語をスペイン語に訳すには「日本文→和西辞典で不明な単語を調べる→スペイン文」という手順に従えばいいようですが、そんなに話しは簡単ではありません。日本語をスペイン語に訳すには
1)日本語の意味を確認する。
2)構文を決定する。
3)適切な語彙や表現を選定する。
4))性・数一致などの文法事項を確認する。
というプロセスが必要になってきます。
1)日本語をスペイン語に翻訳する際の最初のプロセスは、日本語で書かれている内容を正確に理解するということです。言うまでもないことですが、各単語を和西辞典で調べて、それに対応するスペイン語に置き換えれば、スペイン語として理解可能な文ができ上がるわけではありません。まずその文脈における日本文の意味をよく理解してください。個々の語や語句の意味をばらばらに確認するのではなくて、文の中で用いられている意味を確認してください。この確認を怠ると正確な翻訳はできません。
2)日本語の意味を確認した後、実際の翻訳の作業に移ります。まず構文の決定です。日本語で書かれた内容を伝達するのに適切なスペイン語の構文を選択しなければなりません。『構文編』で学習した知識がこの時に役立ちます。スペイン語の構文のストックが豊富にあれば、適切な構文を選択できる可能性が高くなります。この時に元の日本語をどのように加工したら、スペイン語に訳すことができるかを考えてください。また、修飾語句を取り払って日本語で書かれた文を簡素化して検討することも必要です。
3)次のプロセスは、どのような語彙や表現を使うかということです。構文の決定と語彙の選択は密接な関係にありますので、双方の知識が増えていくと、相乗効果でスペイン語の作文能力が磨かれます。さて、適切な構文で文を作っても、語彙の選択を誤ると内容が正しく伝わりません。語彙力をふだんから養っておく必要があるのはこのためです。語彙的な誤りや発想の違いによる誤りを避けるには、スペイン語の母語話者がもっている語感や発想を獲得する必要があります。より多くの外国語の表現を覚えて、適切にそれを取り出す訓練をすることです。語彙を増やしたり語感を磨くには、スペイン語に接する時間を増やす以外に方法はありません。しかしただスペイン語を読めば進歩が望めるわけではありません。スペイン語で書く能力を養うためには、スペイン語で書かれた文を作文の観点から観察するということが必要です。スペイン語で書かれた文章から、作文に役立つと思われる構文・語彙・表現などを自分で拾ってまとめるということも一つの方法だと思います。また単語の意味を独立して記憶するのではなく、より大きな単位である語句に注目することも重要です。各単語が\xA1
どのような語と結合するのかという語のネットワークを意識するようにしてください。語のネットワークを記憶するという意味では、短文を記憶することはとても有効な学習方法だと言えます。
4)最後にケアレスミスがないかどうか、書いたスペイン語をチェックします。動詞と前置詞の支配関係や性・数一致などの文法事項を、音読しながら確認してみましょう。音読することによって、スペイン語として不自然な語順や訳が見つかるものです。
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