スペイン岬の別荘で絞殺された男の死体がマントの下が裸であったという本書の特徴は、なぜ被害者は裸にされたのかという不可思議な状況設定にあり、前作「チャイナ橙」の「すべてがあべこべ」という状況に引き続き、この謎が解ければ犯人もわかるというパズル的な要素が強いという点で前作と趣を同じにしている。
しかし本書では、(これはネタバレにはならないと思うが)犯人の立場からすれば当然水着姿で犯行に及ぶべきところ、なぜか実際は誰が考えても不自然な姿で犯行に及んでいる。
この点エラリーは犯人が水着姿でなかったと論証するだけで、事前に犯行準備を行っていたはずの犯人がなぜ水着を用意しなかったのかについては一切説明していない。
また、「なぜ被害者は裸で殺されていたか。」の謎解きは一応論理的ではあるが、犯人の目的からすれば下着まで奪う必要はなかったはずで、それはおそらく「下着姿の男の死体が見つかった」では読者に与えるインパクトが弱いことから作者の都合で裸にしたのだろうが、犯人が水着姿ではなかったことと合わせて作者は犯人の行動論理を無視しており、また犯人がそのような不自然な行動をとったことに対する説明がなされていない本書は論理的な作品とはいえないと思う。
本書で唯一面白いと思ったのは、原題「THE SPANISH CAPE MYSTERY」の「CAPE」が、「岬」と「ケープ(マント)」をかけたシャレになっていることぐらいだった。