コロンブスがアメリカ大陸を発見した同年、スペインでは「国土回復運動」が完了しイスラム勢力が一掃された。ユダヤ人も弾圧され改宗か追放かの選択が迫られた。改宗を潔しとしない人々は祖国を去り、他の西欧諸国やイスラム圏に逃げた。改宗した「新キリスト教徒」も豚という意味の「マラーノ」と呼ばれ、常に蔑視と異端審問の恐怖に晒された。戦国時代にキリスト教布教のため日本に渡来、医学の分野で大きな足跡を残し、大友宗麟がキリシタン大名になるきっかけともなったイエズス会士ルイス・デ・アルメイダが「マラーノ」であった事実は、ほとんど知られない。一方祖国を去った人々の子孫がスピノザ、ベニヤミン、エリアス・カネッティである。さらにドイツの文豪トーマス・マンのブラジル生まれの母が、スペインからポルトガルに逃げ、後にブラジルに渡ったマラーノの子孫ではないかという可能性の高い仮説を立て、現代文化への影響にまで筆は及んでいる。