すばらしいタイトルと興味をそそる「帯」のコピーに惹かれて購入したが、一読、期待を裏切られた。本書の帯から、スプートニクショックによる理工系学生の定員増とそれに翻弄された理科系秀才たちについて、筆者の友人の生涯を通じて述べようとしたものだと期待したのだが、結局何をいいたいのかわからなかった。
なぜなら、筆者は主人公の人生を描き切れていないからだ。それは、ひとえに調査不足にあると思われる。いや、もしかすると主人公に対する関心をそれほどもっていないのではないかとの印象すら感じた。特に、未亡人へのインタビューは、ほぼ原稿が仕上がった段階でおこなわれており、そのやり取りからは主人公と筆者とのかなりの距離を感じた。
結末部分で、筆者推定で数億の資産があった元外資系在日トップの主人公が、なぜ東京郊外の2DKマンションで最期を迎えなければならなかったのかという謎解きや、人生星取り表を作成して主人公の人生の「勝ち越し」と判定するあたり、理科系らしい分析と独特の考え方だなぁと面白く読んだ。本書は、古希のお祝いや同窓会に集まった友人たちへの「引き出物」ではないかというのが私の結論だ。