浅薄この上ないネット上、それも、掲示板の繋がりだけで、何人もの中高生がバスジャックなどという愚を決行できるのか。バスジャックをする少年たちには、生い立ちが不遇であったという、大人たちへの恨みがあるという。しかし、自らの人生を棒に振るような挙に出られるほどの不遇さ、そして自爆テロを行うような原理主義者たちほどの信念。このような非常に強力な負のモチベーションを読者にはっきりと意識づける描写が作中からは読み取りにくい。それっぽい描写があるにはあるが、訴求力の点で劣っている。だから感情移入できない。ストーリーのオチの部分も、今までの山田作品で読んだ覚えのあるアイデアである。いみじくも、作中における地の文で、あまりの不可解な状況に、「嘘に決まってる、そんな馬鹿げた話があるか」、「現実離れしすぎていて、何が真実で何が嘘なのか分からない」。と自ら語っている。著者本人にも、突拍子のなさがわかっているのかもしれない。
作家でない僕が言うのも僭越だが、本作品の冒頭以前の物語。つまり少年たちがネットで出会うことになった経緯を丁寧に描き、そして東京タワーでの邂逅を以て物語を終わらせた方が、数段味わい深い作品になるような気もした。