主人公達主要人物の精神年齢が低すぎて感情移入できないとか、ストーリーがご都合主義だとか、悪に染まる主人公の描写ベタすぎて辟易…など悪口はいくらでも書けるがそれでは賛同を得られないと思うので、二点指摘を。
この映画は、人気作品にありがちなことだが、一つ一つのシーンの面白さを重視する余り、全体としての一貫性を失い、何を描きたいのかが非常に不明瞭になっている。そのわかりやすい例がサンドマンのラストシーンだ。なぜサンドマンを赦すのか。それは相手のことを考えずただ怒りのままに戦っていたピーターの成長と、サンドマンを単なる悪と描かないことでストーリーに深みを持たせようという、浅はかな試み。叔父を殺したのは故意ではなく、殺してしまった夜のことをずっと悔やんでいた?サンドマンは無力な警官を何メートルも殴り飛ばしていたではないか(画面では死んだように見える)。スパイダーマンも殺されかけたではないか。理由が娘のためなら強盗殺人を赦す?スパイダーマンの正義とはそんなものか。「娘を何よりも大事に思う怪物の悲哀」「サンドマン登場シーンの鮮烈さ」「ピーターの葛藤と成長」「人間の弱さ」「正義とは何か」などなど、描きたいものがたくさんあるのは結構なのだが、それを全部やろうとしたら作品は矛盾してしまう。追う兎は多いが、一羽も得られてない。
アクションも一度見れば十分。確かにCG技術が進み、どんな動きでもモンスターでも表現できるようになった。サンドマンの映像表現は工夫されており、上手かったと思う。しかし、肝心のスパイダーマンのアクションが、てんでダメである。重さと空気を感じないのだ。ああいう重さのものはあんなに急激に加速、減速はしないし、風を利用して空気を描こうということも殆どないので、真空状態みたいに見える。スローモーションが多すぎて、動きから速度や加速度という重要な情報が欠落してしまう。確かにCGは何でもできるが、何でもできるからこそそれを抑えなければ、現実からどんどん解離してしまう。エキセントリックではあるが、味がない。
この映画に送りたい言葉は一つである。秘すれば華、と。この映画は娯楽映画としてはある意味での到達点であろうが、低俗な芸術と成り果てている。そして私は、低俗なのに高尚と騙る映画より、低俗なら低俗と開き直っている映画の方が好きだ。