私は高校時代、数学2Bの範囲までしか学習しませんでしたが、そんな私でも本書の内容は100%理解でき演習問題も無難に解けたので、理系に限らず文系の大学生にも線形代数の入門用にお薦めです。
ただ本書においては、しばしば重要な定理に対して単にいくつかの具体例が示され、なんとなく定理のイメージが出来たところで証明を抜きにその定理を定式化するという高校数学的アプローチが採られており、必要最低限の公理から厳密に定理を演繹して体系を構築していくという大学数学的アプローチがおざなりになっている場合があります。そのため、学ぶべき線形代数の水準がこの限りではなく、理論的に体系性のある数学を身につけねばならない方は、他の数学者によって書かれた線形代数の入門書を一から読み直す作業が必要不可欠でしょう。
私はこの事実によって本書の価値を否定しようとは思いません。もし、徹頭徹尾ガチガチの定義&定理によって塗り固められた他の入門書に先に手を出していたら、間違いなく線形代数のおもしろさを理解することなく挫折していたからです。ただやはり、本書を読んだからといって、数学的に線形代数の基礎が固められるわけではないと思います。