私の学生時代にこんな本が有ったら、もっと微積分を良く理解出来たのに、と思ふ様な本である。特に、講義4「2変数関数の微分」の分かり易い、視覚的な説明には感心した。この本を読めば、高校生でも、偏微分係数や全微分と言った概念を楽に理解出来るのではないだろうか。2変数関数における偏微分係数や全微分と言った概念は、とても重要な物で、例えば、熱力学において、全微分を直感的に理解出来無ければ、エントロピーの意味は、絶対に理解出来無い。しかし、私が大学生だった1970年代頃の大学の数学の教科書は、2変数関数の偏微分係数や全微分と言った重要な概念を、この本の様に丁寧に図入りで説明しては居なかった。又、物理学の本も、全微分とか積分因子と言った言葉をきちんと説明してくれなかったので、熱力学の勉強などでは、エントロピーの数学的意味が把握出来ず、本当に苦しんだものである。(逆に言へば、こんな本が無かったあの時代の理科系学生のどれだけが、エントロピーの数学的意味を本当に理解して居たか、私には疑問である。)こう言ふ分かり易い教科書で勉強出来る今の大学生は幸せである。ただし、矢野健太郎・石原繁著『解析学概論』などの、「読みにくい」数学の本も、必ず、併せて読むべきである。若い時は、分かりにくい本と格闘する事も大切だからである。
(西岡昌紀・内科医)