カナダ人地理学者ポール・ホフマンの半生から、今日明らかにされつつある地球史の中で最も論争的な「スノーボール・アース(全球凍結)」の存在証明に関わる学説史を活写する。
冒頭プロローグの、ホフマンがマラソン選手として苦悩していた若かりし頃から、最終エピローグのワイングラスを飲み干す場面まで、ともすれば冗長に日常の描写や同僚の性格までが描かれている。簡潔にこの地球史上の事件をだけ正確に知ろうとする者には苛々させられるかもしれない。がしかし、地理学者、地質学者、地球学者のやっている日々の営みを考えると化学実験屋以上の単調な事の繰り返しの中で年月をかけて根気よく地道に事実を明らかにしていくこうした事によってしか、断片を組み合わせてその向うの消え去った眼に見えない世界を想像し更にそれを総合した真実を明らかにしていくことなどはできやしないという、そういう現実をこそあえてこの女性記者は伝えようとしているのだ。
そんなに大部というわけではない。普通の文庫サイズに、五億から十億年前の全球凍結があったかもしれないことの証明と、その後の生物大進化の過程が足早に詰め込まれている。
一方では両極の移動や地軸の転回という全球凍結説を打ち壊してしまうかもしれない説の展開をも併記しながら、他方では全球凍結に襲われた可能性は少なくとも四回確認されていることの実証が補充され発展しとうとう今認知されようとしている、そうした両極端のスリリング、エキサイティング、ホットな場面に今日直面していることが本書により伺い知ることができる。地球史に根差した生命史の輪郭は、進化論を超えて今まさに精確に描かれ直そうとしているとも言える。