長編小説の『海猫』や『余命』(共に映画化)などで知られる著者の最新刊。46歳という成熟した女性を主人公に、既記の作品らと同じく読みごたえのある長編小説が発表されました。
コンビニでアルバイトをする宗助は、まだ大学生。介護の仕事をしている美南子と出会い、やがて閉ざされた彼女の心へとまっすぐに熱を傾けてゆく。
しかし美南子は親子ほども歳の離れた宗助に対し素直に向き合うことができない。流産、離婚歴、<突然、シャッターを降ろされる>かのように突き放された記憶、様々な過去に自分を漂わせたまま浮上しないでいるようにも見える美南子。
宗助は言う。
<あなたは何か逃げているんだよ。本当はまだそんなにきれいで、素敵なのに>(帯のコピーにもなった一文)
美南子という人物がとる行動や決断には、様々な戸惑いや焦れを覚えつつも、同時にそれは、大人なら誰もが必要とする勇気に等しいことを気づかされます。
ありきたりな出会いに見えながら、そこにいる人たちにとってはかけがえのない瞬間になり得ることを、あるいは、最終的にそれを決めるのは自分自身の生き方であることを、すべての読者にきっと納得させてくれる作品であると言えるでしょう。
ひとことに「恋」といっても様々な形がある。すべての出会いが何かのきっかけであるという可能性を秘めている。そんなことを気づかせてくれる、大人の純愛小説です。
主人公・美南子の勇気に心打たれ、涙しました。そんな小説は、なかなか存在しないと思うのです。