新装版エルリック第四巻。収録作は……
「魂の盗人」(1962)
「闇の三王」(1962)
「忘れられた夢の隊商」(1962)
『ストームブリンガー』
第一の書「死せる神の帰還」(1963)
第二の書「黒の剣の兄弟(はらから)」(1963)
第三の書「悲しき巨人の楯」(1964)
第四の書「悲運の王の死」(1964)
初出の年代を見ても分るように、シリーズ最初期の作品たちです(シリーズスタートは1961年)。とはいえ全く心配無用! 今回の版は物語の時系列順となっているので、ひとまずの最終巻として怒涛のクライマックスに突入していきます。物語は圧巻の一言。混沌そのものと手を結び、世界を歪めつつ突き進むパン・タンの神政官ジャグリーン・ラーン。エルリック、ムーングラムらの宿命の行き着く先は……!?
多様性や変化といった「可能性」そのものである<混沌>と、規律や正義であり、「停滞」そのものともなる<法>。二つの勢力の戦いの反映としての世界。世界は一言で切り取れるものではなく、ここで示されているように「葛藤」そのものなのでしょう。また、ひかわ玲子氏の解説で示されているように、現在の現実世界は再びこの「葛藤」が激しさを増しているように見えて、だからこそ自身も混沌に属しながら法の力を借りて混沌と戦わねばならない葛藤そのものの存在であるエルリックやストームブリンガーの姿に心魅かれるのかもしれません。まさに現代の叙事詩といえるでしょう。
さて次巻からは、21世紀になってから書かれた、新世紀のエルリック・サーガとなります。40年前に書かれた本巻ですでに示されていた現代の叙事詩が、21世紀になってどのようなビジョンとして提示されなおすのか。楽しみに待ちたいと思います。