『ストロベリー・パニック!』は小説・コミック・アニメ・ゲームと、複数のメディアにて展開されている作品です。コミック版だけは小説版をほぼ忠実にコミカライズしている様ですが、アニメ版・ゲーム版及びこの小説版は、世界観、舞台設定、キャラクター配置等を共有しているものの、展開されるストーリー及びキャラクターの性格付けやデザイン等が大きく変更されている場合がある事を理解している事が必須ですね。
例えばアニメ版から入ったファンがこの小説版を読むと、かなり違和感を覚える場面も多々あるかと思いますが、単に一つのシナリオを複数のメディアに振り分けている訳ではなく、それぞれのメディアに合った魅せ方の工夫がなされている点、良く練られたレベルの高い企画モノであると言う印象を受けました。
この小説版の魅力は、"百合モノ"というジャンルに合わせたかのような、独特の美意識に則った細かな状況描写や、同じくけれん味満点で綴られる各キャラクターの心理描写の豊富さが挙げられますね。若干まだるっこさが感じられたのも確かですが…
主に蒼井渚砂×花園静馬と此花光莉×鳳天音という2組のカップルを中心に物語は進んでいきますが、この似て非なる両カップルを巧みに対比させてそれぞれを魅力的に描いているし、その周囲を取り巻くキャラクター達の思惑や行動も結構印象的です。各校生徒会同士の軋轢や、涼水玉青・南都夜々と言う良く似た立場のバイプレイヤーの想いも、アニメ版とは違った形で掘り下げられていて、小説版ならではの楽しみ方が出来ましたね。
「ストパニ」=「百合モノ」と言った等式は決して間違ってはいないのですが、「百合」という言葉に秘められた、背徳感から醸し出される美しくも妖しい世界や、清冽にして高尚な美学を掘り下げると言った内容はそれほど重視されていません。あくまで女の子同士の絡みを軽めのタッチで描く事を第一義とした作品である事も前提ですね。