「ストレイ」このタイトルが示すとおり、ここで聴ける音楽は、かつてのアズテック・カメラ=ネオアコの貴公子、そんなイメージでは語ることのできない、とても迷いのあるアルバムです。実際、現在このアルバムに対する一般的な評価は決して高いとは言えません。
前作、「ラヴ」(1987)あたりから、アズテック・カメラは、徐々にロディのソロユニットとなっていきました。音楽性も、初期のギターを中心としたアコースティックなサウンドから、奥さんの影響と言われるソウルっぽいサウンドへと移行していきました。そのまま、ソウル路線を、推し進めるかと思いきや、この90年発表の「ストレイ」では、多種多様の音楽を取り入れ、まさにタイトルどおり迷走しているのです。
いきなり1曲目から、とてもゆったりとしたジャズを聴かせます。ストレイの始まりです。これは今までのロディとは違う、そんなことを感じていると、いきなり次はアメリカン・ロックな2曲目になります。そして、最初だけジャズなのかと、思いきや、4曲目でまたジャージーな音を聴かせます。おおこれはどうなっているんだ、と思っていたら、なんと5曲目の「グッド・モーニング・ブリテン」では、元クラッシュのミック・ジョーンズとデュエットしています。これをものすごく良くいえば、バラエティに富んだ展開ということになるでしょう。
かつて1STアルバム「ハイ・ランド・ハード・レイン」の歌詞で、「壁からジョー・ストラマーのポスターが剥がれ落ちた」とパンクの終焉を歌ったロディが、ミック・ジョーンズと共演したという事実。これは、ある意味、このアルバムの象徴的な部分だと思います。