「(この本にはジョブスが気に入らないこともたくさん書かれると確認して)それは良かった。それなら社内で作った社長礼賛本みたいになる心配はないな。かっかするのは嫌だから、当分、読むのはやめておくよ。読むのは1年後くらいかな―そのころ生きていたらね」。
ジョブス本人からの依頼をきっかけに書かれた伝記のII巻。ジョブスはその理由として、あまり父親らしいことをしてやれなかった子どもたちに自分のやってきたことを知って欲しいと思ったということと、死後いろいろな人が間違った内容の本を次々出すだろうからちゃんとしたものを遺したかったということを挙げていたそうだ。
この巻には、アップルへの復帰、ピクサーの成功とディズニーへの売却、そしてiMAC, iPod, iTunesストア, iPhone, アップルストア、iPod, iCloudといったイノベーションを次々と生み出した様子とその舞台裏を明らかにしている。がんとの闘いについてもページを割いている。Googleとの確執といったこともとりあげている。それから、巻頭には家族や本人の写真が収められているが、これは著者が今年の8月にジョブスに呼ばれた際に選んだものだ。
このII巻で扱っている範囲は比較的時代が新しく、アップルの絶頂期に重なる。よって、元々ジョブスやアップルに関心のある人にとっては既に知っていることも多く出てくる。しかし、それでもさすがにジョブスの全面協力で作られているだけに、かなり詳しい。iPhnoe4のトラブルやストックオプションをはじめとした過去の報道の中には実態より騒がれすぎのものもあったことを説明しているところもある。また、ジョブスと関係者の間で証言が食い違っていて事実関係の特定が難しいことについては、両者の主張を併記する対応をとって書かれている。終章ではジョブスの業績を簡単に総括しており、彼の発明品を列挙したいちばん最後に、アップルという会社を挙げ、アップルこそがジョブスの最高・最大の作品だったと本人も考えていたとしている。
本人はもちろん、一緒に仕事をしてきた関係者やIT業界の有名人たちや家族やなど大変多くの人たちに丁寧に取材して書き上げられている。スティーブ・ジョブスについての本はたくさん溢れているが、やはりこの本はそれらの中でも別格の存在といえる。