このところ流行のスティーブ・ジョブスに関する本。それら多くの著書と同様に本書から得るものが少なく、タイトルに引かれてビジネス書と思うと肩すかしを食らう。
本書は「スティーブ・ジョブズ-偶像復活」(ジェフリー・ヤング、ウィリアム・サイモン)を下敷きにして、著者のコメントを加えたようなもの。ジョブズの交渉エピソードを紹介し「ここがすごい!」と繰り返し述べ、ソニー、ホンダ、パナソなどの半世紀以上も前の日本のベンチャー創業者やその成功事例を引き合いに出して評するばかりである。また、それらエピソードを術(=テクニック)として抽象化していないので、これを読んで交渉術を身につけるには応用力が必要だ。
本書の良いところはとにかく簡単に面白く読めることだ。ただし、ジョブズの来歴を知らない人にはピンと来ない部分があるように思う。評者はアップル製品の愛用者であり、ジョブズを類い希な興味深い人物だと思う。しかしながら、昨今大量に出版される伝聞によるスティーブ・ジョブス本には、正直言ってもう「お腹いっぱい」だ。本書も、タイトルにネット俗語の「神」を持ち出す軽さでつくられたジョブス礼賛本と言った趣である。