わたしたちは小説を読むときに、常にその結末に意識を傾ける。
物語には常に始まりがあり、ストーリーはその終結に向けて流れるからだ。
しかし、この本に収録されている物語には、今まで感じたことのないような新鮮さがあった。どの作品も、人生のあらゆる地点におけるスタートが描かれているからだ。
誕生、結婚、離別、あるいは死の直前。わたしたちは、人生という限られた時間の直線上に生きているが、どこがスタートラインで、どこがエンドラインかを線引きすることは難しい。けれど、後で振り返ってみたときに、あのときが始まりだった、ということは少なくないはずだ。そのことを、この本は思い出させてくれる。
長編小説の、あらすじを追うのに疲れたときに、こういう本が傍にあるとありがたい。