SFアクションに見せた痛烈なる社会批判。冒頭3分あまりの歴史の授業の中にこの映画の価値が凝縮されている。一般民と市民の違いは何か?我々にとって国家とは?安定した平和な世界を実現できるのは、偉そうに御託を並べているだけの社会科学者か、それとも絶対的な力か?
この映画には他にも興味深い点が多くある。男女共同参画どころか、寝食を共にし同等に困難な作業をこなす完全男女平等社会。自分が仕掛けたことはすっかり忘れて、やられたら倍にしてやり返せと逆切れ反撃正議論を振りかざす地球連邦にアラモ以来のアメリカ的外交が透けて見える。バグズが知的生物か否かという論争は、新大陸植民開始期に流行ったネイティブアメリカンは人間か否かという論争とダブって見える。知的でなければ煮て焼いて食ってもいいということなのか。自然と人間の二項対立が目立つ西洋的価値観がそこにはあるのかもしれない。その他にも、国家の忠告を無視して植民し虐殺されてしまった宗教団体。報道の正義か特ダネ欲しさかわからないが、同僚が襲われているのに、なおカメラを回す報道馬鹿。国家や世間体なんて関係ないとばかりに金儲けだけに走る「一般民」。市民権と引き換えに、ひたすら国家に駒扱いされる一兵卒。SFはとかく非現実的な設定で深遠なテーマを取り扱うことが出来るとはいえ、一つの映画でここまで盛りだくさんなテーマを揃えてくれたとは本当に驚きである。
この映画は多くの問題提起をしているがはっきりした答えは与えてくれていない。軍事政権を批判しているのか、それとも資本主義に巣食う社会科学者を批判しているのか?絶対の力による支配がいいことなのか、悪いことなのか?これらはそもそも安易に答えられる問題ではない。映画を見終わってから我々一人一人が考えていくべきことであろう。