「人は何歳であろうと既にそれぞれの人生を背負っている」という当り前のことを、この原作と映画は教えてくれる。岩崎恭子の「今まで生きて?」発言がかつて話題になったのも、「子供への先入観」があったからだろう。
冬編「マンハッタンの奇譚クラブ」は、どことなくコナン・ドイルの「赤毛連盟」を彷彿とさせる怪しさとゴシックな雰囲気を持っている。作品の舞台はニューヨーク東35ストリート249Bの、とある会員制社交クラブ。ただし、その成り立ちは不明、会費も無料だという。
上司の誘いでそこに足を踏み込んだデイビッドはいくつかの疑問を抱きつつも、しだいにその居心地の良さにのめり込んでいく。珍本かつ傑作ぞろいの書庫、巨大な暖炉、樫の寄せ木張りの床、ビリヤード台、象牙と黒檀を刻んだチェス、トランプ、スコッチ、ブランデー、皮が肉汁で張りつめ湯気をあげるゆでたてのソーセージ、そして会員たちが語る風変わりな体験談。その極めつきはクリスマスの前日、ある老医師が語った、ひとりの若く美しい妊婦をめぐる、奇怪だがロマンチック、しかも心温まる物語だった。モダン・ホラーの騎手がホラーをメインディッシュではなく香辛料として、最小限の描写で最大の効果を上げた意欲作と言える。(中山来太郎)
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19 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
映画だけじゃもったいないよ。,
By masaoasis (埼玉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫) (文庫)
映画を観たことがある人も、ない人も読んで後悔はない。観たことがある人は映画との違いが楽しめるだろうし、観たことがない人は読み終えたあと、きっと映画を観たくなるだろう。 試写会で映画を観賞したあと、スティーブン・キングは「よく僕の原作をここまで素晴らしいかたちで映像化してくれた」と言って号泣したそうだ。 久しぶりに読み返してみて、その比喩の巧みさにひたすら感動した。わかる、わかると何度ひざを叩いたことか。今更ながら、彼の文章力を痛感した。山田氏の翻訳もきっと素晴らしいのだろう。もし僕がアメリカ人で、原語で読むことができたならば、その世界観を今以上に深く理解できるのかなと想像し、それって信じられないくらいにすごいことだなと思った。だってすべてを理解できない今でもかなり入り込めるし。 小学生の頃、たしかに自分の周りの世界は小さかったが、そのちっぽけな世界の中で、子供ながらにも心が複雑に揺れ動いていたことを思い出させてくれる。そんな小説です。
13 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
へこ。,
By
レビュー対象商品: スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫) (文庫)
原書「DIFFERENT SEASONS」の四作のうちの後半、で、そのタイトルがスタンド・バイ・ミーということで。 訳者あとがきを見る限りにおいて考えるに、映画化目前にして急いで出版したのだろうなぁ、と。 この春夏編が後に「ショーシャンクの空に」の映画日本公開にあわせてやっぱり出版されたが、なんというか。 そういう運命の本だったのかなぁ。 翻訳はどうしても大筋はともかく、ディテールにおいては訳者の感性に大きく依存してしまいます。表題作「スタンド・バイ・ミー」の主人公が少年時代、しかもおそらく女性には理解はできても復元することのできない思春期直前の時期の出来事の回想録である以上、訳者は男性の方がよかったのではないか、そしてあくまで原書を二つに分けて翻訳本を出版するということをするのなら、そのどちらも一人の翻訳者さんにお願いするべきだったのではないかと思います。
8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
原文ならではの良さ,
By
レビュー対象商品: Different Seasons (Signet) (マスマーケット)
日本語版では春夏編と秋冬編で二冊に分かれていますが、これは一冊に4作品とも入っています。だから、値段的にはお徳ですね。今、これを読んでいる方々は自分の英語力と相談している方が多いのではないでしょうか。英語の単語も文法もあまり知らない人は読もうとは思わないと思うので、そうでなければ、辞書を引きながら読み進めて行くことが出来ると思います。ただ、Shawshank(春編)は刑務所用語が多いように思いました(大体、大学受験で使う程度の辞書に載っています)。The body(秋編、日本語タイトルはスタンド バイ ミー)はローティーンの少年が使うような言葉が多いです(辞書の意味と合わないものや、辞書にないものもまれにあったように思います)。また、大人になった主人公の回想の中で使われる表現もやや難しく感じました。映画も観た。日本語訳も読んだ。次は原文をと思われるかたは読んでみて下さい。初めて英語の小説を読まれる方には難しいかもしれませんが、時間をかけて原文を読むと、なぜか深くまで作品にこめられた作者の意図を読み取れたような気がしてきます。
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