まずこの本は中立のスタンスを崩さない、そのためには非常に手間のかかる作業を要求されるわけだが、それでも作者は作家性に頼らずに事実を偏らない解釈で並べていく。この本が作者の博士論文であったというのもうなずける。
この本に興味を持つ方なら目を通している可能性の高い2冊の本、スイートソウルミュージック(SSM)とアトランティックレコード物語(MM)と比べると、SSMが作者のソウルミュージックへの愛情を前提に書かれている事で、多少の齟齬を帳消しにする読み方を求められ、又MMがアーティガンという稀代の大物への好奇心から、その裏の顔を浮き彫りにする過程でジャーナリスティックな偏りを色濃くするのを納得する読み方を求められるのに対して、この本は正確な資料を提供することによって結果としてスタックスの実像を浮かび上がらせるという手法を取る。
よって何となく手にとって読んでみたという本にはなりにくいが(それならSSMがお薦め!)、反面スタックスの歴史や所属アーティストたちの代表曲が空で出てくる様な、あの時代の空気が大好きで、あのとき本当は何が起きていたのかという事に興味がある人にとっては堪えられない類の本であります。
根を詰めて読むより、28枚組のコンプリートシングルズを流しながら読み解いたりすると格別な味わいを醸し出すスルメのような本かもしれません。