『スタイルズ荘の怪事件』は、ポアロが初登場する記念すべき第一作。これからポアロシリーズに浸ろうと目論んでいる方には、本作から読むことをお薦めします。
第二作目の『ゴルフ場殺人事件』の冒頭から数ページ目辺りに、こんな会話が出てきます。
「じゃ、おもしろいわね?あたし、犯罪が大好きなのよ。ミステリ映画はかかしたことがないわ。殺人事件なんかがあったら、あたし、新聞をはなさなくてよ」
「じゃ、”スタイルズ荘の怪事件”をおぼえていますか」と私はたずねてみた。
「ええと、あれは――おばあさんが毒殺された事件じゃなくて?たしかエセックスのあたりで?」
私はうなずいた。
こんな風に書かれてしまうと、『スタイルズ荘』から先に読まないわけにはいかなくなりませんか。
ミステリー小説としては、他作品と比べるとやや落ちるかもしれませんが(他が凄すぎるので)、私はとても楽しく読むことができました。なぜなら、クリスティーの作品は、ミステリーである以前に一つの小説として素晴らしいものだからです。探偵とともに推理する楽しみだけでなく、登場人物の描写、会話、上品な英国の雰囲気こそ味わうべきではないでしょうか。