寿司というよりはマグロの話である。
寿司の国際的な普及により、一躍最高級食材となったクロマグロ。話は空輸技術の開発物語から始まり、築地の仲買人、米国のレストランの現場、某宗教系の企業までが参入する生産地での買い付け、養殖化への試行錯誤、国境をまたいだ裏取引など、マグロを追う者たちを全世界に追って展開する。
「脱・マグロ至上主義」を(一人で勝手に)標榜し、回転寿司のマグロにも手を出さない私としては、マグロ以外の魚介類、例えばサケやハマチやサバやウニがどのような位置づけを与えられているか、北海のニシンやタラ、地中海・南米のカタクチイワシ、中国や南米の淡水魚など低価格で地域色の強い魚がどう利用されているか(または、される可能性があるのか)など、「寿司」全般についての話題をもう少し取り上げてほしかったように思う。流通や消費についても、敷居の高い高級店のうんちくやサクセスストーリーばかりではなく、回転寿司やスーパーのパック寿司にも目を向ければ、やはり大量流通・大量消費のグローバリズムの影は認められたのではないだろうか。
とはいえ、本書の取材範囲はきわめて広い。関係者へのインタビューも、市場関係者・漁業者・寿司職人から不法取引の監視を行う養殖業コンサルタントまで、よくぞこれだけ精力的に調べて回ったものだと感心するほど多岐にわたり、寿司の歴史を始め文化的な部分についても(何か微妙に視点がズレている気がしないでもないが)かなりの紙数が割かれている。前述の通り魚種がクロマグロ、店が高級店に偏りすぎていること、同じ内容の繰り返しやまとまりに欠ける冗長な記述が目立ったこと、あまりに手を広げすぎて内容が粗雑になっている部分も見られたことなどから私自身の評価は星3つとしたが、スケールの大きな力作であることは疑いない。