この作品の魅力はなんといってもルキノ・ヴィスコンティの「山猫」以来のバート・ランカスターとアラン・ドロンの共演。しかも、スパイ・アクション。当時設定でこの配役は少年時代の私がどれほど待ち望んでいたことか。
二重スパイの容疑をかけられた相棒の命を狙う殺し屋という一見単純なストーリーに見えるためテレビでの予告編は結構アクションシーンが強調していたが、バート・ランカスターの逃亡手法や妻との連絡のとり方等細かい点に工夫が凝らされているし、協力者セルゲイ(ポール・スコフィールド)との交友や妻を殺された主人公の復讐劇、ラストの真相等なかなか複雑な展開を丁寧に描いている。まるで何層にも分かれたストーリーを上手く合成した形になっている。
こんな作風は70年代のハリウッドのアクション監督ではなかなか描けないだろう。イギリスのマイケル・ウィナー監督だから描けるアクション一辺倒でなく伏線いっぱいでヨーロッパを中心とした展開という贅沢な展開に仕上がったのだろう。
マイケル・ウィナー監督は「ジョーカー野朗」や「脱走山脈」でオリバー・リードと組んだ佳作を打ち出し、アメリカに移ってからはバート・ランカスターと組んで正義を貫く冷徹な保安官を描いたアメリカ西部劇らしくない「追跡者」も作っている。だから、今回の作品もどこかアメリカらしくない作品となっているのだろう。
アラン・ドロンもフランス映画(というよりジャン・ピエール・メルヴィル監督の殺し屋と比較し)の殺し屋と違いカラッとして良くしゃべるキャラになっており雰囲気が違う。
この作品で残念なのは同監督の他の作品同様に緊張感が今ひとつ伝わらないところか。とはいえ、イギリス映画のテイストが残っているところが魅力の贅沢なスパイ・アクションであることは間違いない。