全六巻のカナダ・コミック「Scott Pilgrim」シリーズの最初の二巻、
「Scott Pilgrim's Precious Little Life」
「Scott Pilgrim Vs. The World」
を完全日本語化して一冊にまとめた本です。
ペーパーバックの原作が一冊千円で、二冊まとめた本作が二千円ですから、たいへん妥当な値段設定と言えるでしょう。
むしろアメコミを買い慣れてる人からすれば良心的なレベル?(まぁ、フルカラーではないですけど)
全371ページですからボリュームは十分です。
作者のブライアン・リー・オマリーは日本の漫画やゲームの文化に親しんできたらしく、極端に記号化されたキャラの描き方にその影響が見て取れるかもしれません。
とはいえ、いわゆる萌え絵とは異なる系統の、独特のポップな可愛らしい絵柄を確立しています。
海外コミックなんて読んだこと無い、という方でも読み易い一冊でしょう。
そして何よりストーリー……これがすごい……ものすごいセンスです。
大学は卒業したけど無職で、ロックバンドのベースを務めるフツーの男、スコット・ピルグリム。彼の日常は、世話焼きなゲイとルームシェアしたり、中国系移民で六歳年下の女子高生と付き合ったり。そんなある日のこと、夢のなかで一人の不思議な女の子と出会あったことから、ハチャメチャな事態に巻き込まれていく。
……はずなのですが、どう見ても異常な事態が目の前で起きていくのに、あくまでそれが日常の一部であるかのように振舞う登場人物たち! これはもはやSFなのか!?と思わせるような異常な世界観。そして、そんな中で織り成される奇妙な恋愛模様。
とにかく予測不能の展開の連続に、腹を抱えっぱなしです。
ゼロ年代的感覚でカナダの若者たちの生態を面白おかしく描き上げ、社会的リアリティとゲーム的リアリティの共存する奇妙な世界観でユーモアを生み出す、ドタバタコメディの大傑作と言えるでしょう。
……ただひとつ翻訳版で気になるのは、書名にナンバリングがされていないこと。
果たしてちゃんと原作を最後まで翻訳してくれるのでしょうか。原作二冊を一冊にまとめるとすると、あと二冊は出る計算になりますが……。
それはきっと本書の売上如何に掛かっていることでしょう。
このレビューを読んで興味を持たれた方は、是非ともポチっとレジに進んで、続刊への希望を繋いでいただきたい。
「可愛い絵が好き」「ただのギャグ漫画には飽きた」「海外コミックに触れてみたい」「とにかく変なモノを読みたい」といった方にオススメの一冊です。
(個人的には、道満晴明の漫画が好きな方などはセンスが合うのでは……などと勝手に思っています)