タカチこと高瀬千帆、高校三年の冬。
学園の女子寮に深夜戻ったタカチは、ルームメイト
で、恋人の恵が、何者かに惨殺されたことを知る。
当初、タカチが筆頭容疑者と目されるが、のち
に、恵と噂があった教師・惟道に容疑がかかる。
しかし彼は事件当時「スコッチの瓶を持って河原に行き、中味を川
に捨てていた人物を尾行していた」という珍妙なアリバイを主張した。
続いて起きる第二、第三の事件。事件は解決されず、迷宮入りに。
二年後、タックこと匠千暁が、タカチの郷里ですべての真相を解き明かす――。
本作の構成は、序章で、現在のタカチが、タックとともに惟道のもとを訪れた
場面が描かれた後、女子高生連続殺人事件の顛末が語られる過去パートへ。
その後、「川にスコッチを捨てる人」の謎だけをタック、ボアン先輩、ウサコに
議論させる机上推理パートを経て、タカチの郷里でタックが事件の真相を解
き明かすパートに進み、序章の場面に繋げられるという流れとなっています。
ミステリとしては、殺人事件よりも「スコッチの謎」のほうがメインといえますし、
殺人犯の動機よりも、その周囲にいる人物の人間性や思惑を浮かび上がら
せようとする作者の意図が感じられます。
なので、作中で唐突に展開される、突飛な「男のナルシシズム」理論なるものは、
動機のエクスキューズであると同時に、ある意味、ミスリードの一手段ともいえ、
真に受ける必要はないでしょう(しかし、該当する人が皆無だとは思いません)。
タカチの重い過去話、という先入観を読者に抱かせ、ミステリ
としての仕掛けから目を逸らさせる作者の手腕が冴えてます。