世界情勢に関するウソかマコトか分からない雑学が満載で、その部分は陰謀論的面白さがある。「真実」かどうかを真面目に論じるのは野暮というもの。素直に「インテリジェンスオフィサー」気分を味わうのが正しい楽しみ方であろう。この「インテリジェンス」部分の価値だけで星5つ。
だが、どうにも戴けないのは小説部分だ。
天才的な頭脳と最高級のインテリジェンスを持つはずの主人公が「S&P500」について友人から事細かに説明を受ける下りなど(友人の「君ほどの人物が知らぬはずあるまいが、念のため説明しておこう。何をたくらんでいるんだい?ふふふ」というような、しょうもないフォローがあることはあるのだが)、思わず椅子からずり落ちそうになってしまった。
読者のための説明だということは痛いほど分かるのだが、「痛いほど分かる」ことがそもそも問題だ。著者には、自然な背景説明に関し天才的技巧を持つ
ハリー・ポッターシリーズ全巻セットのJ. K. ローリング女史の爪の垢でも煎じて飲んで頂きたい。
良くも悪くも「ウルトラ・ダラー」と同程度のデキ。私と同様「ウルトラ」が楽しめたご仁は、本書も同じくらい楽しめるはずである。だが、著者の小説的技巧がもう少し向上していれば、この題材はもっと楽しめたはずだ。残念でならない。
本書は、さながら最高のエンジンを搭載し、安売りタイヤを履いたスポーツカーといった風である。タイヤが気になっていまいち乗りきれないし、実際ときどきズッコケる。
著者の小説技術改善を切に祈り、叱咤激励の想いを込めて最終的な星は3つとした。