野球関連ノンフィクションとして最高の部類に入る一冊。沢木耕太郎の亜流で過大評価されている山際の埋め草エッセイ集など比較になるまい。まずスカウトという目立たない職業の人間に焦点をあてるという着眼点が良い。気負わない文体もマル。さりげないようでいてプロ野球界という大きな問題も視野にはっきり捉えられている。さらに言えば戦後のプロ野球の歩みも広島という球団をとおして実に生き生きと伝わってくる。なお作中に登場するオリックス三輪田スカウトが業務上のストレスから沖縄で投身自殺したことを思うと本文にも触れられているスカウトを取り巻く過酷な環境が新たに胸にせまってくる。同僚のオリックススカウトが号泣しながら球団経営者たちが骨抜きにしたドラフト制度を責めていたのが思い出される。