イギリスの新鋭児童作家エイモリーが2006年に発表した処女作で、元気な少年少女が活躍するSF風冒険ファンタジー小説の話題作です。物語は空にそびえ立つ巨大な柱の上に幾つもの都市スカイシティを建設した天上人(エアボーン)の世界で幕を開けます。彼らは大昔に地上での大災害を逃れて空に移り住み、次第に背中に天使のような翼を持って空を飛べるように進化しました。ユートピアのような暮らしを続ける彼らでしたが、最近になって心配事が起こります。彼らの生活を支える資源を地上から自動供給していたシステムが何者かに妨害されている疑惑が浮上したのです。天上人の指導者セリーナは、何故か生まれつき翼のない少年アズに地上界での調査を依頼します。幼い頃から差別され苛められて来ましたが真面目で心優しい性格のアズは使命を引き受け巨大エレベーターで地上に到着します。そこでアズが遭遇したのは思いも寄らない地上人(グラウンドリング)の姿でした。
本書にはヒーローの少年アズ以外にも魅力的なキャラがたくさん登場します。ヒロインの元気で男まさりの地上人の少女キャシーと他四人の家族、セリーナの腹心で謎の天上人ミスター・モーダドサン、信仰により地上人を支配する狂信的な助祭シャターロンガー、ヒューマニストと名乗るが行動はテロリストの危険な地上人アラン、喧嘩好きで乱暴者だが憎めない地上人のコリン、巨大戦車バーサ&飛行船セルリアンetc。大きな読み所としては、平和を守ろうと狂信的な悪党に立ち向かい奮闘するキャシー一家の活躍、異種族の壁を超えてアズとキャシーの間に芽生える淡い初恋でしょう。他に「マジポン」という言い回しが元気ハツラツで良いです。場面展開がスピーディーで一気読みも可能な面白さですが、反面駆け足過ぎて心情描写が少ないまま終わってしまった印象がありますので、既に発表されている続編の出来に期待しつつ紹介される時を楽しみに待ちたいと思います。