本書は保育園を廃し、就学前学校へと制度を移行させたスウェーデンの就学前学校制度の実態と背景をレポートしたものです。
前半は実態のレポートです。子どもの主体性や好奇心を重視する教師の姿勢や、それを裏付けるドキュメンテーション(文書化)。第三の教育士=環境として、一クラス15〜20名の子どもに対して3人の教育士という人的配置、自然豊かな屋外環境、生活の場と遊びの場の分離、子どもの安心感のために家庭の写真の掲示・両親の作った人形など、きめこまかい配慮がうかがえます。就学前学校での一日の流れも紹介されており、子どもたち教育士たちのの様子がおおよそわかります。だいたいは「保育園」と似ていますが、好奇心や主体性を意識的に伸ばすことや、文書化によって細かく検討していることなどから、遊びの中に学びの萌芽を形成しようとする姿勢が見て取れます。
後半は就学前学校の背景の解説です。就学前学校は教育法が根拠にあり、管轄が社会省から教育省に移りました。地方自治体に設置義務があり、親の就労と子どもの養育と学習を保障するための機関です。民主的な価値観や思いやり、多様性の尊重など、おおまかなカリキュラムが設定されており、各運営主体が具体的に実現していくことになっています。就学前学校の質向上のために国や自治体は調査をし、人員を配置し、研修制度を設けています。本書にはその国からのアドバイスが掲載されていますが、カリキュラムを日常的活動の中に統合することや、子どもの好奇心や学びに有効な働きかけ方、子どもの経験の中から意味と内容を自ら創造すること、など保育と学習を統合させることを強く意識していることがうかがえます。
本書では保育制度がどの子にも行き渡ったので公教育制度へと移行させた、との論文が掲載されています。本書を読む限りでは制度移行の明確な理由は明らかではありませんが、教育学の発達(詰め込みではない幼児教育の開発=好奇心を伸ばす教育)によるところが大きいのではないかと思います。幼児教育の必要性が経済界から強く喧伝される今日の日本。一歩先に確実に幼児教育へと移行したスウェーデンの姿が大いに参考になると思います。もちろん、現状の保育制度の範疇でも参考になることは多々あると思います。生き生きとした子どもの写真がとてもかわいいです。