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この人の作品は、というより推理小説そのものだが、ほとんどがトリック自体がオリジナルで驚かせてくれるものだが、一部トリックはオリジナルでなくてもシチュエーションへのはめ込み方が素晴らしいものとがある。この長編は前者で、トリックが本当に見事。
舞台設定がうまいのは勿論、キャラクター配置も無理がなく、テンポもいい。そして、たまたま居合わせた有栖川が火村を呼び出すや、あとはいつもの通り2人のやりとりを楽しみつつ、はめ絵のごとく全てが解決されていくのを目の当たりに出来る。本当に、カタルシスをたっぷり味わわせてくれるので、読んで疑問や義憤が残らず、精神衛生上とても有難い。
それにしても、有栖川が電話で状況を伝えたその日のうちに京都から裏磐梯まで駆けつける火村は、犯罪学のフィールドワークのためとはいえ何という身軽な男であろうか。コンビの第2作『海のある奈良に死す』あたりから有栖川の言及が思わせぶりになってくる、火村の過去とは一体どんなものなのか。全て明かされて欲しいような、明かされた時はシリーズが終わりなのか、気になって気になって仕方ないのは彼についてだ。
もともとが正統派で、謎解きの面白さを堪能させてくれる、推理小説らしい素推理小説といえる作風だが、クイーンを敬愛しているというだけあって、まさにクイーン張りの面白さ。敬愛している作家がいて、その作家のような作品を書くことに成功できるとは、有栖川有栖とは何という幸せな人だろう、と思う。
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