日本が、追いつき、追い越そうとしていた先進国の背中が、見えていた時代は過ぎてしまいました。ある意味で先頭に出たにも拘らず、人々にその自覚はありません。追いつくべき目標を見失い、自信を失ってしまいました。これからこの国を、どこへひきいていくのか。政治家は勿論、識者も明確なビジョンを示せません。日本の未来への道筋を考えるさいに、英米や中欧型のモデルではない、参考になる他国の事例はないのか。そう考えると、近年成功している北欧のスウェーデンの国家全体を研究し、紹介している本書が、身近なものに感じられます。
この国独自の国家運用法が、判りやすく紹介されています。高度経済成長を担った女性の社会進出で、家庭が崩壊。その後経済も低成長になり、老舗の世界的自動車会社さえ倒産。国民の少子化と高齢化が進み、今までの年金制度が将来は維持しがたくなった。など早い段階で現代社会特有の問題に襲われたスウェーデン。それに▽持続可能な社会を第一基準にして、▽高福祉の実現、▽高負担を担う国民の意思、▽市場を独走させず、政府が活用する仕組み、▽個人の好みに応じる安い製品で成功した企業。などを可能にした諸制度を、明確な国家理念の元で定着させた。統計を引用し、歴史的な目で詳しく紹介されています。しかし著者は、それらを模倣すればよいとは、言っていません。
これらの仕組みは、国民にかなり負担を強いたものです。しかしそれが円滑に動いているのは何故か。この国では、▽しっかりした国家理念が国民に共有されている。▽政治に透明性と情報公開があり国民が政治を信頼している。▽国民が高い政治意識を持って政治参加をしているからです。一方日本には、それらが欠けている。それを先ず実現せよと著者は檄を飛ばしています。日本の惨状はそのとおりです。しかし黒船が見えなくても、内発的な革新力を活性化できるのか。そこが問題です。