今回はどれもあっさりさっぱりの塩ラーメン風味の四作品。どの作品もポイントとなるのが
ワントリックなので、そこに絞ることが出来るため非常に読みやすい。深みがないと言えば
それまでだが、短編は読みやすくきっちりとまとまっている事が肝心だと思うので、評価は
高めにしたいと思います。以下、それぞれの感想。
「あるYの悲劇」:アンソロジーの時に既読でしたが、改めて読んでも”Y”を被害者が壁に書
いたことに対するロジックというか理屈づけが好きです。ダイイングメッセージの謎自体は
とっても簡単ですが。ただ、自分が被害者だったら恐らくそんな動きはしない、と思う。
「女彫刻家の首」:EQの「ローマ帽子」や高木彬光の「人形」の様に、何故犯人がこうい
う行動をとったかということが肝になる作品です。解答は非常に単純な理由ですが、それ
だからこそ短編としての完成度が高い納得いく仕上がりになるのではないかと思います。個
人的にはこのなかで一番好きな作品です。
「シャイロックの密室」:今回の飛び道具。叙述形式だから、という訳ではなくトリックが
トンデモ密室で、漫画やテレビドラマ向きな馬鹿馬鹿しさ。こういうのを書くからアンチが
増えるのだろうと思いますが、カーの一部の作品や戦前の日本の作品の中にはもっととんで
もない密室ものがあるのでそういったものへのオマージュだと思えば・・・
「スイス時計の謎」:表題作。トリック自体は簡単ですが、”他が全部白だから残りは黒”と
いった感じのロジックが美しい作品です。でもやっぱりちょっと強引な気もしますけれど
古今東西、名探偵はそんなものだと思えば問題なし、かな?