全く著者についての予備知識もなく、タイトルに惹かれて読んでみた。
どのエッセイも、まるで短編映画を観ているかのような、静謐であったり、官能的であったり、ドラマティックで鮮やかな展開を見せてくれたエッセイだった。
「黒いミラノ」に始まり「船との別れ」まで、鮮やかに情景と色彩、香りが伝わってくるエッセイ集。
”事実は小説よりも奇なり”のごとく、イタリア在住30年以上になる著者が、実際に体験して見聞きした逸話や関わってきた人物達が、そこらへんに転がっている映画や小説の物語や登場人物よりも、ずっと魅力的だった。
特に印象的だったのが、
「僕とタンゴを踊ってくれたら」
「ジーノの家」
「サボテンに恋して」
「初めてで最後のコーヒー」
「船との別れ」
それぞれの、名もない普通の暮らしをしているイタリア人達のドラマティックな人生が、ミラノ、ナポリ、シチリアなどの風土のイメージが加わり、味わいがあって深い余韻が残る。