解説で柴田元幸氏が言及されているカーヴァーよりも、訳された言葉の質感からブコウスキーを連想しました。また、昨年読んだ「通話」のロベルト ボラーニョより、当たり前といえば当たり前ですが、描かれている「暴力」がずっと乾いているので、その分猥雑さに欠けるところがあり、したがってそれだけ風通しがよいような印象も受けました。しかし、作品の並べ方と「ジーザス・サン」というタイトルから、この文体がなければ矮小化した読み方に陥ってしまいそう(解説で柴田元幸氏もそのことに触れています)ですが、いずれの作品にもそうさせない「毒」のようなものが仕込まれており、はまれば容易には抜け出せない、麻薬性の魅力を有した作家です。また、村上春樹氏の「バースデイ・ストーリー」に、「ダンダン」という短編が収められており、そこに付された氏による短い解説も、この作家の特質を知る有用な手がかりを与えてくれます。