まず断っておくと、日本盤にしては非常に値段がおさえられているのはいいのですが、でも、日本語訳も解説もついておらず、ついているのは歌詞だけです。
次に、収録曲は、すべてライヴ・ヴァージョン。1~10はエレクトリック、11~15はアコースティックとはいうものの、それほどちがいはありません。聴衆との一体感がすばらしいです。
そして、かいつまんでレビューすると、2は、日本では白鳥英美子が歌って有名になったトラディショナル・ソング。バエズ流に詞と曲を差し挟んでいます。4のトラディショナル・ソングとともに、魂で歌うゴスペルという感じ。バエズ自身が詞曲を、あるいは詞のみを書いた曲は、8、14、15。8では、それまでに屈託のない歌声が続いたのに対し、哀愁を漂わせています。バエズは、先輩歌手としてボブ・ディランの才能に眼をつけ、デビュー当時の彼をバックアップし、その後何度も共演したことで有名です。ここでも、6,7、9、12、13とディランの曲をカヴァーしています。6、12は、哀愁の漂うディランのオリジナルとはちがって、ただただ聖なる祈りと化しています。
バエズの澄んだ声質、抑揚のある歌唱力、力強い歌唱法はそれぞれ、われわれが抱く“アメリカのすぐれたカントリー女性歌手、あるいはフォーク歌手”のイメージ通りです。バエズのあと、カントリー出身のカレン・カーペンター、オリビア・ニュートン・ジョン、フェイス・ヒルといった系譜が存在していると思います。しかし、バエズの場合、PV・テレビで活躍するポップ・スターではなく、自分でも弾き語りとそこそこのソングライティングができ、さらにウッドストックにも参加したライヴ・パフォーマーです。バエズはあくまで古きよき60年代の人として現在も活躍していると言えるでしょう。