「ジョンの魂」で始まり、「ダブル・ファンタジー」で終わる構成。
この間、キャロル・キング、サンタナ、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイド、
Tレックス、エマーソン・レイク&パーマー、イーグルス……などなど、
まことに70年代らしい顔ぶれの代表的なアルバム50点が、いくつかの
エピソードも織り交ぜつつ、過不足ない文章で紹介されています。
個々のアーティストの熱烈なファンや、この時代の楽曲が音楽体験の原点
だったりする方には、不満・不足な点があるかも知れませんが……
(自分の学生時代、まさに周囲の友人はこうしたアーティストの熱烈な
ファンが多く、それぞれの優位性を主張し合って喧しかった)、
……自分のような普通の音楽好きには、必要にして十分な内容。
70年代以前から活躍し続けるローリング・ストーンズやボブ・ディランは
もとより、プレスリーのライブまで採用しているところにも、著者の見識の
一端は見出せます。
つまり、70年代ロック同時代人として、というよりも、ジャズを含む、
大きなポピュラー音楽史の流れを掌握した、この著者ならではの仕事。
その結果、懐旧に浸ったり、分析に走ったり、愛欲(?)に耽ったり、
というクサミがない(著者の既刊書で、ときに発している激烈なアジも)。
要するに、過剰な湿度も衒学も体臭もないのが、心地よい。
「オイオイ、それじゃ、ロックの意味ないよ」
という方の気持ちも、分かります。
しかし、酔わせて欲しいのは、“ロックないし音楽そのもの”。
それをなぞるような御託宣、御講話だったら、退屈というより、蛇足。
むしろ炎をウチに秘めた冷静なバランス感覚こそ、この種の文章には
必須だし、1冊にする企画の意味もあるでしょう。
本書はその点、大いに満足。
……とはいえ、たとえば、この1週間(12月8日前後)にひもとくと、
ちょうど中ほどにあるジョン・レノンのアルバム「ロックンロール」
についての文章は、妙に生々しく、胸に響きます。
つまり、体臭はなくとも、確実に、体温の伝わってくる好著。