講談社100周年記念「書き下ろし100冊」の「ジョン・マン波濤編」の発売が2011年1月6日、この続編発売が2011年12月20日と約1年振りだから、随分と待たされた。これでは完結するに何年かかるのか。100周年記念は「子供から大人まで幅広く楽しんで頂ける書き下ろし作品」がモットー。その為か本書はとても易しく書かれる。1頁の字数も少なく、まるで児童書だ。文章が上手いから読めるものの、正直言って物足りなさは否めない。これまで万次郎書ならば津本陽著「椿と花水木」、中濱武彦著「ファースト・ジャパニーズ」が良かった。本書の良い点としては、万次郎側とは別に、米国側のWilliam H.Whitfield船長や、捕鯨船乗組員や捕鯨についての記述が多い点だ。また当時の欧米豪による無茶苦茶な乱獲捕鯨を記していることだ。 いずれにしても万次郎達は鳥島漂流から、米捕鯨船に奇跡的に助けられ(1841年6月27日)、ホノルルに到着した(1841年11月20日)。その当時は黒潮に流され鳥島に漂着する例が多かった。天明5(1785)年、天明8(1788)年、寛政2(1790)年に鳥島に上陸した漂流民達は協働して舟を作り故郷に戻ったそうだ。本書で最も印象的な描写は73ftのマッコウクジラの捕獲場面だ。5人乗るWhale Boat1杯には6本の銛と鉄製の槍1本を備えるが、鯨には3杯のボートの20本近い銛が刺さり、銛打ちは泳いで鯨の背に上がり止めの槍を急所に突き立てる。闘牛でマタドールのエストカダ(最後の一突)と同じだ。マッコウクジラの18m超級なら鯨油が100樽以上採れる。捕獲後すぐに厚さ6インチ(15cm)に皮を剥ぐ。その皮を6インチ角に刻み大鍋に投げ込む。脂肪が溶け出した皮とその他丸ごとを海に捨ててしまう。日本なら肉・血・皮・骨等々全てを使い、日本は「一頭仕留めれば七浦が潤う」程に無駄がないし、日本人は鯨に感謝した。欧米豪の捕鯨法に対し、「皮だけ剥ぎ取るような仕打ちほど鯨に無礼なことはない」と万次郎は憤る。筆之丞(36歳)は傳蔵(デロ)と改名し、重助(23歳)はジェシカ、五右衛門(17歳)はグイモ、寅右衛門(24歳)はトレモ、万次郎(14歳)はそのままマンジロウと呼ばれた。ここ布哇でジョン・マンは4人と別れ、米国New Bedfordに向かう。さて次の第3巻の発売はいつになるやら。