70年代、「未来惑星ザルドス」や「エクソシスト2」といったハリウッドの大作映画を撮っても、独自の個性で単純なエンタテインメントには仕立て上げなかった異色のイギリス人監督ジョン・ブアマンの作品群の中でも、「ポイント・ブランク」、「戦場の小さな子供たち」と並ぶ代表作。ダム建設で自然破壊が進むアメリカジョージア州の渓流谷にカヌーを楽しみに来た4人の都会人たちが遭遇する戦慄の物語だが、とにかく、不条理な人間ドラマに、サスペンス、アドベンチャー、アクション、ホラーと言った多様な要素が盛り込まれた異様に緊迫感溢れる傑作だ。ブアマンと撮影監督のヴィルモス・スィグモンドは、作品のトーンを荒涼感で満たす為、シックなロケ地、曇天での撮影にこだわり、更に彩度が減ずる映像処理を行ったという。川下りでのカヌーの転覆シーンを始め、危険な場面を全て俳優たちが自ら行っているのがえらい。70年代を代表するアクション・スターのバート・レイノルズが、颯爽としていたのも束の間、重傷を負い無力になってしまい、代わって、知的エリートのジョン・ヴォイドが、極限状況の中、闘争本能を目覚めさせ、生き残るため殺人をも犯し、皆を導く辺りが面白い。70年代〜80年代の名バイプレーヤーであったネッド・ビーティやロニー・コックスも好演。ラスト、なんとか“脱出”し、日常世界に戻ったものの、言い様のない不安感に苛まれるヴォイドの表情と、波ひとつ立たない湖水面の静寂さのコントラストが、なんとも不気味で余韻が残る。アメリカでは、この年公開された「ゴッドファーザー」、「時計じかけのオレンジ」、「ダーティハリー」、「わらの犬」、「フレンチ・コネクション」と並ぶヴァイオレンスをテーマにした映画史に残る傑作として名高い。この価格なら文句なしに買いの1本だ!