正直言って、相当びっくりしました。バタイユは20世紀を代表する思想家・現代哲学者であり、筋金入りの無神論者。しかも、未完の草稿であるが故に、一番難解な「聖なる母」を映画化するとは、大胆不敵。
私は彼の全集を購入して全てを読んでおり、自称「バタイユ研究者」ですが、「聖なる母」は理解に苦しみました。
バタイユは難解だと言われていますが、正統にニーチェの思想を受け継いだ人で、「エロティシズム論」が代表作ですが、彼の思想は社会人類学にまで及び、優れた哲学者だと評価します。
しかし、映画は映画、原作とは別物。バタイユのエロティシズムの思想のみが強く表現されていて、原作に基づく映画化とは言い難い。それにも関わらず、ポルノグラフィーでもなく、かと入って理屈っぽくもなく、品位と節度に知性を加え、今風にアレンジされていて、それもびっくり。内容の濃さ・過激さのわりには軽く、さらさらとクールな表現に徹しており、かなり意外な結果でした。ちょっと怖い部分もあり・・・ですが。
バタイユ・ファンが観ると「何だこれは!」ですし、際物的な文芸ポルノグフィーを期待した人が見ると、なんだか物足りない。中途半端と言えばそれまでですが、単に、映画というメディアを通して、極上で危険なエロティシズムを表現し、ある意味では成功した作品だと思います。その勇気ある、大胆な試みに敬意を表しての「四つ星」です。
そもそも、原作自体が未完の草稿であるため、それが映画化されても誰も正統に評価できない、というところが本音でしょうか。
結論として、宗教(カトリック)とバタイユのエゴとの究極の葛藤は割愛されていて、心理学的なマザコンの部分をクローズ・アップした、近親相姦の映画になっていた。私もそれ以上は語れません。