ジュール・ヴェルヌ没後100年の記念の年に、母国フランスで出版された作品の翻訳。
図版が豊富で、手にずっしりと重い豪華本である。
ヴェルヌの作品の土壌となった19世紀の科学技術や産業の発展を概観することによって、
それらと有機的につながっていた彼の作品をみずみずしく浮かび上がらせてゆく。
今日の科学的な”事実”や産業技術が確立されるまでに19世紀の人々が重ねた仮説と実証、成功と失敗が語られ、
まず平明な自然科学史としてとてもおもしろい。
そして何よりヴェルヌの作品にわくわくさせられた読者として、
当時の科学の最先端の知識を果敢に吸収し、それを咀嚼して第一級のエンターテインメントへと仕立てあげた
彼の才能にあらためて感嘆するとともに、作品の随所に滲み出る彼のペシミズムもやはり時代背景と無縁ではなかったのではないかと
ほろ苦く感じたりもした。
ヴェルヌ作品に気球が多く登場する理由が判明したり、ヴェルヌの作品に親しんだ人なら膝を打つ場面がいくつもある。
個人的には、初読の際にそのあまりのトンデモぶりに声が出なかった『地軸変更計画』の発想が、実は人類が火星に対して行おうと目論む計画
と大差ないと看破されているのが衝撃であった。
読後、すぐヴェルヌが読みたくなって、図書館で40年前のヴェルヌ名作全集を借りてきた。
願わくば「ヴェルヌの子供」が21世紀も増え続けんことを。