悪徳による現世利益と美徳による不幸を永延と書き続けた作品である。
悪徳については論破できないことはないが、大切なのはいちいち論理的
なところであろう。悪徳についての論理追求は一見破綻が見られない
程までに仕上がっている。
そういう点では、読む人を選ぶ作品である。人間の論理や道徳だけでは
どうしても説明できない、思考の影の部分に真正面から向き合った作品
故に、やはりある程度身構えて読める人に読んでいただきたい。
要は感化されやすい思春期の少年少女にはお勧めできないということで
ある。しかしこういう影の部分があるからこそ、西洋哲学、思想が、
現代に至るまで強固なものになっているということは言うまでもない。
思想小説としては申し分ないが、残虐な描写や、それを裏付けようとす
る論理については、サドの最も禁句的領域なまでに足を踏み入れた、
ソドム百二十日には及ばないという点では星4つであろう。