「ジャンピング☆ベイビー」は元夫婦がかつて一緒に飼っていた鎹である猫のユキオを完全に埋葬をするところから始まります。鹿の子が三年ぶりにあった元夫ウィリーはかつてのかわいいナイーブな外見とは違ってまるでネオナチのようになってしまっているのだけれど、二人は友達でも兄弟のようにでもなく、かつての濃い日常を共有し、今は分かれた互いを知りすぎた二人として、鎌倉を移動しながらひと時の時間の共有をしていきます。電車で移動する、議論的会話する、ご飯を食べる…たわいないけれども特別なこの過程がが二人の懐かしい思い出を呼び覚ましてあまやかな風が吹くのと同時に、二人の道がぷっつりと切れていることを同時に感じさせられます。たとえば、「君に嫌われることなんて何にも怖くないよ」とウィリーがすねると鹿の子が『もうすでに一度嫌われたわけだしね』と心の中ですぐに切り返しをするあたりに。 この小説は「以前の鹿の子とウィリーを想像させる作品」を知りながら読んでいると時の流れを思ってしまう本ですが、苦しみの中に埋もれている「許し」について描かれた物語だとも思います。それからいのちの賛美も、という意味では草原の輝きのテーマにも少し似ているのかな。でもあくまでも現実的に行動する力がある鹿の子は、草原の輝きのヒロインよりもずっと成熟しています。ある意味あきらめを重ねているということでもあるのかもしれませんが…。こういう私小説的なものを読むとき、どこまでがほんとうなの??と知りたがっても仕方がないことをどうしても考えてしまいがちですが、熟慮された構成をたどっていくと、これはやっぱり小説なのだと思いました。また、彼女の書く物語はとても女性らしいので、読み始められるときにはあまり理論的に読みすぎませぬよう…。