冒頭のBlack Minute Waltzは、ショパンの「小犬のワルツ」をアレンジして弾いているのだが、ある程度ピアノを習ったことのある人なら「小犬のワルツぐらい、私だって弾ける」と思うかもしれない。しかし、舐めてはいけない。そんな人にこそ、聴いてほしいのだ。一体全体、こんなに過激な演奏の「小犬のワルツ」が他にあろうか?私は、この過激に装飾され、解釈し直されたジェイムズ・ブッカー版「小犬のワルツ」を聴いて以来、普通の小犬のワルツが退屈にさえ思えるようになってしまった(もし、リストが生きていたら、同等に刺激的なアレンジで弾いてみせたかもしれないけれども)。ジェイムズ・ブッカーの狂気(実際、彼は、奇行・蛮行ゆえに精神病院と刑務所を行き来した)の演奏は、ハリー・コニックJR.(彼のOn The Sunny Side Of The Streetの解釈や彼のいくつかのオリジナル曲の演奏には明確にブッカーの影響が見られる)、ジョージ・ウィンストン(ブッカーの作品の再発に尽力し、ライナーも書いている他、アルバム「ガルフ・コースト・ブルース・アンド・インプレッションズ」でPixieをカヴァーしている)等、多くのピアニストに影響を与えたが、その霊感の源が、このアルバムにある。