バクロ小説というので怖いものみたさ、面白半分に手に取ったが、この本は、高い教育を受けまたそういう人脈のある、打てば響くような鋭い知性と感性を持った人達に素早い行動と議論を促す、火種のような「実用の」書を意図したものと思われた。登場人物は状況を考え合わせて注意深く選ばれた標本であり、全体が切れ味の鋭い筆致で容赦なく描き抜かれ、読者の過度の感情移入を許さない。最後の三章ほどは政治のパンフレットでも読んでいたのかしらんという気持ちにもなったが、ともかく告発のための書はこのように冷静に知的に訴えかけてこそ本来の用をなすという見本のような小説ではないだろうか。いわゆる「文学作品」ではないと思うが、告発の書のあり方として後々も参照されていく作品だろうと思うので、★5とした。