ドアーズ絡みでジャックスにたどり着いたリスナーです。この作品の本質は、CDにも挿入された早川義夫による「JACKSのLPのための原稿」に最も的確に語られていると思います。「僕らの音楽を聞いて僕らをさぐろうなんてことは、つまらぬことだからおよしなさい」と記されてはいるものの、この作品には語りたくなる不思議な魅力があります。「マリアンヌ」での、ジャジーなリズムの荒波を、溺れる寸前の危うさで泳ぐような、異様な迫力を帯びて聴き手に迫ってくるボーカルの衝撃。動揺する心を癒すバラード「時計をとめて」の悲しいほどの美しさ。全てではありませんが、聞き流すことを許さない音楽、聴いている人間が聴いている音楽に心の中を覗かれているような感覚があるといえばよいでしょうか。できるだけ気づかないでいたい闇をリスナーに見せつけて、そこを通り抜けた先にある透明な世界に何度も何度も誘われる気分になります。
「フォークジャンボリーからはみだされ、ゴーゴー喫茶でもしっくりこない」と語られていますが、同じく内省的なテーマにジャズ的なアレンジを採りいれ、時代に先んじすぎたために全く売れなかった名盤アストラル・ウィークス(ヴァン・モリソン)よりも先に世に出た事実から、それは尤もな話で、未だに一人ぼっちな気さえする作品です。