初期のエキセントリックで変態的な表現手法や、中期のジャズっぽいアプローチなんかを通じて、ライブ録音+オーヴァーダブという一つの手法をつくり上げた彼が、でも最後はやっぱり自分しか信用できねえぜ!と世間にグッバイを告げ(多分ね…)スタジオにこもり、サンプリングとプログラミングを駆使してできあがった異色のアルバム。
私は後にも先にもこれに似たアルバムを知らないが、あえて言えば現代のエレクトロニカアーティスト、リチャード・ディヴァインやマウス・オン・マーズなんかの音作りに似ているのではないか?電子音楽による極端な混沌さは変わりないはずだが…。
サンプリング&プログラミングという事で冷たい質感を想像してしまいがちだが、使われている音色は徹底して官能的だし、複雑な曲構成とスケールのはっちゃけ加減にはやはり人間臭さタップリ。そういった意味では先ほど挙げたエレクトロニカとはまた別の物にも思えてくる。
つまり、なぜかこれは「プログレッシヴロック」を感じさせるアルバムでもあるし「エレクトロ」の形もとっているアルバムだ。要は、電子楽器が単に、彼の頭の中で起こっていた妄想を形にするのに都合がよかっただけ。ここでは、多くの演奏家のフィルターを通じてアウトプットされているこれ以外の作品に比べ、よりストレートに変な世界を伝達してくれている。
不必要なアイロニーやストーリー性が消えてなくなり、奇妙で荒削りな楽曲がゴロゴロ無造作に転がっていて、非常に気持ちが良い。一方できっちりと整理された楽曲との対比が、聞き手の心をゆさぶるばかりだ。