多くの方がこの本に好意的なようなので、そのことに驚きつつ、安心して逆の事を書かせていただく。
滅多にアマゾンにレビュー書かない私だが、久々に書く気になったのは、本という物を読んで久々に愉快でない気持ちを抱かされたからである。
まず冒頭から何を言いたいのかが分からない。何度読んでも分からないので、ひょっとしたら自分は日本語の文章を理解できない人になってしまったのか、と錯覚しそうになるくらいである。
というのは、明らかに大げさだが、"名盤というのは多くの人が名盤とするに足る要素があるから名盤となっているのだ"程度の至極単純なことを、そもそも音楽にたいする好悪というものは〜と冗長な語りから入る。その語りが面白いのならまだしも、そんな事もない。
はたして中身も一緒。それぞれの名盤の紹介でも、「人は〜」「ジャズファンにとって〜」「CDには〜」など一般論が多く語られ、しかもその多さの必然性がない。文章にその音楽を聴くのと同じくらいエンターテインメントとして成立するだけの面白さがあれば、そんな否定的な感情も浮かばないのだろう。が、面白くもない文章につき合わされると、まさにその盤の中身について知りたい気持ちが挫かれたと感じ、興味まで減退してしまうかのようである。
そういう訳で、ここに紹介されているものの中には聞いたことがあるものも多数含まれていたが、もう一度引っ張り出して聴きなおしてみようかと思う事もなく終わった。そういう意味で、名盤とされてきたものの新しい楽しみ方を呈示するという冒頭掲げられたテーマが充分実現されているか疑わしい。
また初心者にとっても、それが知るべき事なのかと疑問を感じる事も多い。例えば、コルトレーンが今消費者に遠ざけられていることなど、何の役に立つのだろう。ジャズに入門しようとしている時点で、その初心者はJPOP全盛の状況に背を向けているのだから、彼は良い音楽を聴きたいだけで、状況論などどうでも良いはずなのだ。(そういう意味では、どれが一家に一枚なのかなどまさに初心者にとって知ったことではない、となってしまうのだが)
ともあれ冷静になれば、著者の音楽への知識はJAZZのみに限らず豊富であることは確かであり、著者にまで悪感情を抱くことは自戒しておきたい。講演録や対談みたいなものであればこんな事にはならなかったのだろう。あるいはもっと著者に様々な注文をつけられる有能な編集者が文章をコンパクトに半分以下にまでシェイプしてくれていれば。
結論。音楽評論家というのは、音楽について人一倍詳しいことは無論として条件だろうが、それにも増して、評論家としての文章技術もまた大いに必要だということだ。それを痛感した。JAZZ初心者が、JAZZをより楽しんで入門できるような本は、他にいくらでもあると思う。