戦前のジャズなど、今の日本ではおよそ陽が当たらないのだが、その中でも「女性」となると、更に壊滅的である。そこを掘り起こした著者の着眼に、先ずは敬服したい。
ジャズの「創造者」ルイの妻からベッシー・スミスあたりまではおおかたの想像がつく登場人物だが、二人に続くメリー・ルー・ウィルアムスにはがっくり参った。スイング期からモダン期にいたるまで、作編曲家・ピアニストとして活躍した彼女だが、このような形で取り上げた人がいったいどれだけいただろうか。本書を機会に再評価されればこれ以上のことはない。
圧巻は2章に渡るビリーだろうが、女性ジャズ音楽家の中でもその一生がかなり知られている部類のビリーの生涯を、これだけ生き生きと書き表した書物も数少ないと思う。
残念なのは「ソングブック・シリーズ」の元祖をエラだと誤認している点だ。エラより先立つこと十数年、白人歌手のリー・ワイリーがすでにガーシュインやコール・ポーター等のソングブック録音をしていることを忘れてはならない。