70年代半ば、ハリウッドの娯楽映画の主流はオカルト映画とデザスター(パニック)映画であった。
今作もその流れを受け製作され、「ポセイドン・アドベンチャー」の延長上の作品として宣伝されたが、実は、“プロ”と“プロ”が互いの技量を認め合いつつ、己のメンツと意地を以って、知力と気力を振り絞って命を張って闘う“静かなる冒険映画”の傑作だ。
爆弾が破裂したり、嵐の中での爆弾処理班がパラシュート降下で客船に乗り込むといった視覚的にスペクタクルな場面もあるが、一番の見せ場が、犯人が仕掛けたドラム缶爆弾の処理を、自己の知識と技術と経験から黙々と行うリチャード・ハリスら処理班の“仕事ぶり”であるのがそそられる。
1本また1本と導線を切っていくハリスの顔を、ドラム缶内部からアップで捉えた構図が素晴らしい。
ピンと糸が張られた様な緊迫感の合間に描かれるウイットでシニカルな人間ドラマも面白く、旅客係のロニイ・キニアも、市長役のクリフトン・ジェームズも、有閑マダム役のシャーリー・ナイトも、ユーモラスな中にも見せ場が用意されているが、船長役のオマー・シャリフだけは見かけ倒しの情けなさ。さすがはリチャード・レスター、サスペンスを撮っても一筋縄ではいかない(笑)。
ロシア船を2週間借りきり、豪華客船に見立て、得意の早撮りで撮影、先方が断固拒否していた船内の爆破シーンを撮了日にちゃっかり誤魔化して撮ってしまった辺り、彼もまた紛れもなくプロフェッショナルである。
とにかく、「サブウェイ・パニック」と並ぶ“裏パニック映画”の逸品だし、購入の価値ありだが、残念なのは、再販版にも拘らず決して廉価版とは言えないその値段。これって随分、中途半端な価格設定じゃありません?