著者のもとにさる子爵夫人の孫という女性から手紙が届く。子爵夫人の戦中戦後の日記が残されていて、それは昭和23年の師走に「ジミーの誕生日の件、心配です」と書かれたところで終わっているという。夫人は誰のことを心配していたのか…。
本書の題名から、ジミーとは今上天皇のことであり、またその誕生日である12月23日がキーになっていることは容易に推測できます。事実、東條英機らA級戦犯が絞首刑に処せられたのは昭和23年12月23日、しかもその午前零時1分30秒という狙いすましたかのような日時です。本書はマッカーサーが戦犯処刑日を数十年後の日本人の記憶にも深く刻み込むための策略であったという推論を追ったものです。
もちろん、当時の皇太子の誕生日と戦犯処刑日とが一致しているという日付のミステリーは、今日ようやく明らかになった歴史の謎ではないでしょう。
本書はむしろ、マッカーサーたちが天皇を戦犯として訴追することをいかに回避したか、また天皇の退位の意思をいかに押しとどめたかについて今一度短時間で概観するのにちょうど良い書であるといえます。
「敵国の占領は、たとえ降伏していようと一部に武装して抵抗する勢力が存在してはなりません。(中略)マッカーサーにとっては、昭和天皇を権力をもたない象徴として温存しておくことで日本軍による武装蜂起の根を絶やすことができただけでなく、秩序を維持しやすいので占領コストを大幅に下げることができた」(264頁)。
日本の戦後占領史についてある程度の知識を持つ読者には今さらながらの内容で、食い足りない思いが残るかもしれません。
ですが、中高校生の読者であれば十分に興味深く読めるでしょうし、また米国によるあまり成功しているとは言い難いイラクやアフガニスタンの戦後処理を見る上で、ひとつの視点を提供してくれる本であるといえます。